三浦です。
昨年11月に、GoogleMapsがグッドデザイン賞で大賞受賞内定していたが、 政府が同意しなかったため、特別賞になったという話題がありました。 この時は、紛争地域の国境等の、各国政府による地名等が 食い違う地物に対する表現について、 日本国政府が要求する内容ではない場合がある、ことで 推奨されないような意見がついた、と報道(*1)されています。 まとまった報告等をしていなかったので、 現状のOSMの取り組み状況を一般に共有しようと思いました。 Wikiに書いたほうがいいと思ったので、 http://wiki.openstreetmap.org/wiki/JA:Government_policy_and_OSM 書きました。もう少し綺麗に整形できるといいなぁ。 数年前、学会の研究会で、筑波の国土交通省の研究所の 某会議室で発表した時も、同様の指摘というか質問をいただいていましたので、 それへの回答ともなります。 1) わたしの開発する地図タイル配信ソフトウエアTileMan(*2)では、 次のように取り組んでいます。 OSMを背景地図として情報システム等を運用する利用者は、 TileManを使用して、自分自身のアプリケーションの背景地図の タイルをOSMを用いて配信できる。 この時、大規模な利用を行う利用者は、 *.tile.openstreetmap.orgでの配信をそのまま 使うのではなく、利用者がTilex、mod_tile, mapnik等を利用して サーバを立てることが推奨される。 そうでない場合でも、利用者は、TileManを使うことができる。 *.tile.openstreetmap.orgでの配信を使いつつ、一部のタイルを 差し替えることができる。 これは、利用者が例えば、自治体や府省だったりして、その情報システムを 納品するシステム開発会社が利用するケースを考えてみてください。 自治体や各府省は、内閣官房等からの通知により、 地名等の取り扱いに留意することが要求されているそうです。 (*3) そこで、(*3)で指摘されているような問題や、利用者の意向によって 問題と思われるタイルを置き換えることが可能となっています。 TileManでは、参考として、置き換え用のLiancourt Rock/竹島の タイル画像データ(*4)を添付しています。 https://github.com/osmfj/tileman/tree/master/data ちょっとプログラムを変えれば、静的な置き換えタイルを用いず、 たとえば電子国土Webが配信する地図タイルで差し替えることも 可能です。 やや高度な技術知識(LUA、GIS)が要求されますが、 このようなシステムをつくる事業者ならば問題ないでしょう。 カナダ在住の中国人のOSM利活用者が、同様に中国とインド等の国境紛争地帯についての タイル配信問題でこまっていて、本ソリューションについて、大いに興味をもっていました。 昨年のSotM13で講演したところ、このような話が有りました。 2) OpenStreetMap の編集合戦についてのルール等 OpenStreetMapの活動たる地理情報データベースの整備では 編集合戦等が有る場合があります。 OpenStreetMap FounationのDWGやLegal WGで、いろいろ ポリシーが議論されています。(*5)(*6) 日本国政府が各府省や自治体等に通知したこととしては、 電子地図を背景地図として利用するときに、その表記がどうなっているか、 を調整して、それぞれの方針にしたがったレンダリングや配信をしてもらえば いいので、マッパーの活動に対しては関係ない、です。 従って、切り離して考えたいと思います。 3)OpenStreetMap Japanホームページ及びOSMFJの配信するタイル これらについては、現在、TileManを使っていて、サンプルの竹島のタイル画像も サーバにインストールされています。 日本国内のタイルマップの利用者に対しては地図タイル配信で、 竹島のタイルについて、日本語表記を行う動作をさせています。(*7)(*8) DBからストレートにレンダリングされる結果をマッパーとして確認したい場合は 他のレンダリング配信を利用されるといいでしょう。 4)利用者ガイドライン 重ねて言いますが、OSMFJのタイルサーバの配信は、 各府省、自治体の システムで利用することを推奨するものではありません。 (ガイドラインの整備は、まだできてないです) 納入や運用する事業者等が、適切にシステム構成して、OSMの利用にあたって 利用者の方針等に適合するようにしてもらえればと思います。 具体的には、VMをひとつ用意し、LinuxとTileManを導入して、 竹島タイルをデータ領域に展開します。サーバ設定は、試験のためならば プロキシーとして使う用のTileManサンプル設定を使うといいでしょう。 背景地図としてOSMを使うシステムは、TileManの導入されたサーバを タイルサーバとして指定します。 すると、竹島について不都合の少ない表示になって、府省や自治体への 納入について、課題が減ることでしょう。 リファレンス (*1)GoogleMapsとG賞の報道 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1311/07/news111.html (*2) TileMan http://osmfj.github.io/tileman/ https://github.com/osmfj/tileman (*3) 片山さつき氏 ブログ http://satsuki-katayama.livedoor.biz/archives/7855139.html (*4) 置き換えようのデータ https://github.com/osmfj/tileman/tree/master/data (*5)編集合戦についてのブログ http://blog.emacsen.net/blog/2014/01/17/edit-wars-in-openstreetmap/ (*6)OSMFのポリシー http://wiki.osmfoundation.org/w/images/d/d8/DisputedTerritoriesInformation.pdf (*7)OSM Japanホームページ https://openstreetmap.jp/map (*8)竹島あたり https://openstreetmap.jp/map#zoom=14&lat=37.24421&lon=131.86673&layers=B00 (*9) OSMFJ Tileサーバ http(s)://tile.openstreetmap.jp/{zoom}/{x}/{y}.png 仕様は、*.tile.openstreetmap.org を使う時と同じ。 WordPressやDrupalなどで使うときに、URLを置き換えることでOK. LeafLet.jsやOpenLayersでの利用がおすすめ。 (*10)OSM Japanサイトの開発用VMの再現ソース https://github.com/osmfj/vagrant-drupal 同様のサイトを実現するときの参考になる。 以上 _______________________________________________ Talk-ja mailing list Talk-ja@openstreetmap.org https://lists.openstreetmap.org/listinfo/talk-ja